京都は狐と縁が深い。
そもそも狐は農耕神に繋がる信仰対象であり、古代では豊穣や富といった概念をイメージの中に内包してきた。そして、古代のアミニズムが廃れ、信仰が宗教として形になっていくにつれ、狐に内包された概念は変化していった。神の使いから化け狐として、妖怪として姿を変えていく。
京都は稲荷神社の総本山がある伏見と近いせいか、狐をあちら側として見る信仰が深い。
そんな京都のマイナーだがちょっと可愛い狐の神様達、宗旦(そうたん)狐とお辰(たつ)狐について紹介しよう。

茶道の達人:宗旦狐

今出川にある相国寺の境内には、小さな稲荷神社がある。その神社に祀られているのが宗旦狐である。この宗旦狐はなんと茶道の達人で千利休の孫である千宗旦という茶道家のに化けて、茶会に出没しては見事な腕前で茶を点てていたという。他にも、経営難に陥った豆腐屋を助けたりと化け狐というおどろおどろしいイメージからかけ離れたかわいい狐さんである。
おもしろいのがなんと周りの人も宗旦狐が狐であることを知っていたと言われる。この宗旦狐、碁も相当好きだったらしく、寺の近くの家で碁を打っている時にうっかり尻尾を出してしまうことがあったらしい。しかし、相手している人も狐だと騒ぎ立てたりせず、「宗旦さん、出てますよ」「こりゃ失礼」といったやりとりで場を収めていた。
京都でいかに化け狐達が身近だったのか、窺い知れるだろうか。

琴の達人:お辰狐

神宮丸太町、平安神宮の北側にはかつて聖護院(しょうごいん)の森と呼ばれる森が広がっていた。その森に住んでいた琴上手の白狐がお辰狐である。何でも、宝永(ほうえい)二年に時の天皇の夢枕に立って、自分を聖護院の森に祀ってくれるよう頼んだと言う。天皇はその頼みを了承し、聖護院の森に社に立てたという。それがお辰狐を祀るお辰稲荷神社の始まりだといわれている。辰は達成や上達の達に通じるとして、芸事の上達を願う人が沢山訪れた。
今の聖護院の森は住宅地になってしまっているが昔は深い森で、夜更けに森の際を歩いているとどこからともなくぽろんぽろんという琴の音が聞こえてきたという話が残っている。
この辺りを歩いている時、芸事が得意そうな綺麗なお姉さんに会ったら注視してみるといいかもしれない。案外尻尾がでているかも。