病的賭博いわゆるギャンブル依存症が奪っていくのは「時間」
カジノ解禁法案によって日本に統合型リゾート(Integrated Resort)ができるかもしれない。私は賛成である、是非とも大阪に誘致していただきたい。しかし、このカジノには問題があると言われている。いくつかあるが、一番言われている件は「いわゆるギャンブル依存症」対策である。正式には病的賭博。
さてわが国のギャンブル依存症に陥っている人口はかなり多いのだ、これは世界的に見ても突出している。2008年時点で「日本の成人男性の9.6%、同じく女性の1.6%、全体平均で5.6%がギャンブル依存症のリスクがあった」とされている。これは8年前のデータであり、最新のデータである2016年のものでは4.8%になっている。少し減っているが、それでも多い。
そして昨今ではスマートフォンにおけるソーシャルゲーム「ガチャ」なども病的賭博にあたるのでは無いかと言われており、潜在的なギャンブル依存症のリスクを持った人口は計り知れない。
病的賭博は一つの精神疾患である。この病気と付き合っていくには正しい理解がまず必要なのだ。
ギャンブル依存症の仕組み
そのほとんどが確率の遊びである。基本的には、①お金を賭けて、②予想が的中、機械の抽選に当選する、③払い戻しを受ける。
②の部分で脳内麻薬であるアドレナリンが大量に分泌されるわけである。この興奮状態を味わうために同じ事を繰り返すわけである。
よく間違えやすいのが、依存症の人たちは「大金を手にしたいから」ギャンブルが止められないわけでは無いという事だ。気持ちよくなりたいのがメインである。しかしながら、大金を手にする事をきっかけにギャンブル依存症から抜け出す事ができた例も存在する。
依存症が問題になるのは金銭面が取り上げられがちだ。ギャンブル依存症が続くとどうなるか?と聞いた時、思い浮かべるのは「何もかも失ったホームレス」みたいなイメージである。実際ニュース番組などでもそういった人が紹介されている。
しかしながら、依存症である人間の中には勝ち続けている人もいるだろう。不思議とそういう人たちは依存症とは言わないそうだ。生活に必要なお金に手を出してまでギャンブルをする人を依存症と言う。勝てばギャンブラー、負ければ依存症。
精神病だと広まっていない
アルコール依存症やニコチン依存症のようにギャンブルもその脳内麻薬からは抜け出す事は難しい。近年では「甘え」とされていた「うつ」が病気として認識されてきている。ギャンブル依存症というのは未だに間違ったイメージが付きまとう「借金してまでギャンブルする人」のようなイメージだろうか。
ギャンブル依存症はそのもっと手前なのだ。皆がイメージするのは末期症状であり、もっと軽度な状態を広めるべきである。
日本のギャンブル依存症対策で一番足りない部分はまさにそこであろう。趣味や遊びの範囲と思っているギャンブルが、重大なリスクであると周知させるべきだ。
20年という発症期間を経て破滅に
ギャンブル依存症だと自覚するまでに長い時間がかかると言われる。
第一の要因としては遊戯店とされている「パチンコ店」だ。まず20歳前後、大学生時代にパチンコやスロットにのめり込むのだ。
そこから7年後、ギャンブルのために借金をする。
そしてさらに12年後、ついにはギャンブルのために生活が回らなくなるという。
医療機関での初診が39歳、ここで初めて依存症が発覚するというわけだ。
ガチャから始まるギャンブル依存症
近年、危惧されているのがスマートフォンアプリにおけるガチャである。
「ガチャで最高レアを当てても金にはならないからギャンブル依存症とは関係無いだろう」と私は思っていたが、最近考えを改めることにした。それは借金をしてまでガチャを回すという人間を身近で見たからである。
その人物は6桁後半の借金額でありながら、私の目の前で目当てのキャラが出ないと課金を続けていた。金のリターンなどが無くてもギャンブル依存症というのは成立するんだ、と感じたわけである。ようやく目当てのキャラがでた彼は大変満足そうな顔をしていた。おそらく脳内麻薬がドバドバと出ているのだろう。
スマートフォンの普及に伴い、ギャンブル依存症というイメージをもう一度変えないといけないのかもしれない。IT依存症などという言葉も出てきているが、それとはまた違った問題であると考える。
ギャンブル開始年齢の低年齢化
今までは身近にあるパチンコ店といえども18歳未満の入場は禁止されているため、少なくとも18歳まではギャンブルに触れる機会が少なかった。しかしスマホアプリには年齢など関係無いのだ。同じく確率の遊びに触れる機会が多くなる、依存症の知識も無い内に依存症に陥ってしまうケースが多い。
実際に「子供が勝手に親のクレジットカードで課金をした」などと言った問題も起こっており、ギャンブル開始年齢の低年齢化が進んでいる。
ギャンブル依存症が奪っていくのは時間
ギャンブル依存症の人間が失うモノとは何だろうか。お金か、信頼か、人間関係か。
私はこれを「時間」だと考える。
ギャンブルに費やしているのは「金」ではない。生きている「時間」なのである。
お金は特定のギャンブルをするための手段なだけで、お金が無くてもできるギャンブルは存在する。その全てに等しく費やされるのは「時間」なのだ。脳内麻薬によって作り出される快感のために時間を費やす。
パチンコをするにも、競馬をするにも、スマートフォンをいじるにも「時間」を使っているという意識を忘れてはいけない。
一度失った時間は取り戻せない。
小林RH
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