伝統的な怪談スタイル「百物語」はカラオケである考察
百物語はご存じだろうか、日本における伝統的な怪談会のスタイルである。過去から現在に至るまで文献、小説、ゲームにテレビ番組と様々な作品で百物語がモチーフに使われている。
皆で持ち寄った怪談を交代で合計100話披露するというものである。文献によると100話すべて語り終えると本当の霊が現れるという降霊術の側面もあったようだ。
今回は当時の様子を想像しながらも百物語を考察したい。
正式なやり方
- 新月の夜に3間の部屋を用意し、数人以上で集まる。
- 部屋の電気は全て消して、一番奥の部屋に100本の灯心を備えた行灯(ロウソクなども可)、そして顔を見れる大きさの鏡を置く。行灯には青い紙を張る。
- 参加者は全員青い服を着用(この際、帯刀している刀などは置く決まりであった)、そうして一番手前の部屋に集まる。
- 光が全くない状態が好ましい。順番に3分~5分の怪談を語り終えたら、間の部屋を通って手探りで一番奥の部屋に行く。
- 一番奥の部屋で行灯の灯を1つ消し、鏡で自分の顔を見る。その後、元の部屋に戻る。その間も他の参加者は話を続ける。
- こうして続けていき、最後の灯を消す(100話終える)。
どうやら99話まででやめておき夜明けを待つというのが王道であるらしい。
現代で百物語をやるなら部屋の用意と、特に光を完全にシャットアウトできる場所が重要だろう。電化製品などがあるためなかなか難しいと感じる。
100本の灯心を備えた行灯はロウソク100本などで代用するなどすると大丈夫だろう。
実際やるとしたら
さてこの「百物語」を実際に完走しようとすると結構大変な事がわかる。
まず準備が必要だ、青い紙はすぐに用意できるとして、青い服はなかなか持っていない。下手にグループ全員が青い服を買えば在庫が切れるぐらい持ってない。
次にロウソクである、100本のロウソクは簡単だが、それを置く場所や立てる器具などが必要である。ここをケチると火事大惨事の怪談が生まれる。
というわけで電池式のサイリウムを100本用意すると最高に煌びやかな百物語ができる。
当日の予定は大目に見積もろう、1話3分~5分とはいえ100話となると6時間~8時間だ、もちろんスムーズに行くわけが無い。伝統としては99話で終わり夜明けを待つのがベストなので、およそ逆算して21:00には開始したい。
場所としては正式な方法では参加者のうちの誰かの家となっているが、少し山奥のロッジやペンションを借りるほうがいいかもしれない。夜も静かだろう。
一番の問題は、話のネタ集めである。参加者の人数にもよるが他人と被らないようにするためにも、たくさんネタを作っていかないといけない。仮に5人で集まったとしても25ネタは必要だろう、また前の話の後にうまく関連性を持たせたネタを披露できると評価が上がる。そのため怪談のジャンルもいくつか網羅していなければいけない。
百物語はオールナイトカラオケ
おそらく時代的に怪談ができるのは当たり前だった、得意な持ちネタは勿論のこと誰もが知っているネタ話などもあったのだ。
そして百物語に通うことで新しいネタを聞いて覚える、それをまた別の百物語で披露するのだ。そうこうしている内にネタにも磨きがかかってくる。
似たような遊びを我々は知っている。
持ちネタ曲を歌い、他人の曲を覚えて他の場で披露する。
現代の百物語、カラオケである。ちなみに100曲歌っても本人は登場したりしないのも本家とそっくりである。
夜のフリータイムなどおよそ百物語が可能な時間設定と言える。99曲目を歌って始発である。
百物語に求めていた事は
さて人々が百物語をするのにはどういう理由があったのか、本当に幽霊を呼び出そうとはしていなかっただろう。
怪談を聞くことは「自分の身に及ばない危険を味わえることにより生に活力を出す」というのが目的であろう、危険を避けることにより安心感も得られる。
また反対に怪談を話すことは「自分の会話を聞いてもらう」ことで存在価値などの確認、連帯感、こちらも最終的には安心感を得られるだろう。
しかし、そういった事よりも娯楽としての側面のほうが強かったのではないかと考える。
深夜という人間の活動が鈍る時間帯に、気の合う仲間と集まり一緒に会話をする。青色の服という統一感もここでは重要だったのだ。
青い服を着こんでカラオケにいこう。
小林RH
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