「今思い出すだけでも、体が震えてきます」
 そう語る小林の指は今も懸命にキーボードを打ち込んでいる。彼を動かしているのはこの気持ちを伝えたいという一心だけに他ならない。これから語られる記録はノンフィクションであり、小林ライオンヒートが裏将棋において20年間無敗だったことも事実である。

すべては一通の連絡から始まった

「今日天王寺将棋センター行くしか」
 何の前置きも無く、このような連絡が届いた。送り主は有名将棋ブログ「ocalshow」の管理人である。そもそも私は「将棋」を指せるわけでは無いので何かの間違いかと思い、確認をするために返信する。

「初回無料、二回目半額で初心者講習もあるらしい」
 どうやら本当に誘われているのは間違いないようだ。しかし、何故私のような将棋の漢字を書けと言われて将木と書いてしまいそうな人間を誘うのかという疑問が浮かぶ。といっても人生何があるかわからないものだ、こういった誘いは是非とも受けるほうが良い。

将棋道場のイメージ

 将棋初心者の私だが、大体の事は漫画「ハチワンダイバー」を読んでいたので分かっていた。道場に行くと決まって「ショウレイ会」と呼ばれるスーツ姿のメンバーが居て、そのショウレイ会メンバーも一目を置くという元天才棋士のおじいちゃんがいる、あとヨクサル顔のメイドもいる。店内は鉄火場状態で、対局時計を叩く音だけがリズム良く響くのだ。

 さて、今回誘われた「天王寺将棋センター」の情報を調べておこう。

 大阪JR天王寺駅から徒歩1分程度のビルにある。その昔ABCクラフトやカードラボ天王寺店が入っていたビルである。WebサイトやGoogleの口コミへの返信なども見る限り、とても入りやすそうな雰囲気を感じる。現地の看板には「初心者 女性歓迎」と、こう書かれると反対に「上級者 男性」しか居ない事が分かってしまう。この時点で時間は13時、ちょうど道場がオープンする時間だ。

席主(セキシュ)の登場

 道場の扉をくぐるとすでに3人の先客がいた。パリっとスーツでキメたショウレイ会風、その腕で数々の棋士を喰らってきたであろう蛇、一指しごとに空気が震える抜き身の刃、3人が一斉にこちらを確認してきた。ここで怯んで道場を飛び出すようじゃ覚悟が足りないのだろう、彼らは覚悟の程を無言で確かめているのだ。我々の対戦相手に見合うかどうかを。

(なかなかの気迫を感じるぜ、だが気迫だけで将棋は指せねぇ! 指導対局だ、3人まとめて掛かってきな! 俺がOCAL(オシエル))

「ホームページを見て来ました! 全然将棋をした事が無いんですが大丈夫ですか?」
「席主さんが今出かけてまして、もうすぐ帰ってくると思いますのでその間見学していて下さい~」

 道場内は将棋盤が10個ほど置かれ、席数は最大で20人ぐらいだろうか。店内を見回るうちに入り口の扉が開く、席主の登場だ。退路を塞がれた私たちは覚悟を決める。天王寺将棋センターはまず席主自身が対局をしてくれて棋力を測ってくれるそうだ。まずは駒の動かし方がギリギリ分かる程度の私が指名された。

対局開始

「まぁ好きに指してみなさい」と本当に何もわからない状態で対局が始まった。席主は5段ぐらいあるらしく、ハチワンダイバー的に棋力が高い人は格闘技も強い可能性があり緊張感が高まる。将棋盤の中央が良く削れているのが激戦を物語っている、どうやら天王寺将棋センターは57年ほどの歴史があるらしい。

席主、むちゃむちゃフレンドリー

 途中、幾つかの手で「スジが良い」と褒められた。しかし、この言葉を言われる時点でダメなのだと席主は語る。「スジが良いという単語は下に見られているからこそ出る」のだという。気づけば数分で詰みであった。席主は水を飲んでいると思っていたが、よく見ると黄桜(日本酒)を飲んでいた。対局中も将棋の話よりも女流雀士とカラオケの話で盛り上がった。カラオケ2000曲ぐらいレパートリーあるらしい。

 需要があるかわからないが席主の口癖を箇条書きにして残しておく、席主攻略に使っていただければ幸いだ。

  • このオトコ!」 妙手を指すと言われる、褒め言葉の一種
  • 「なんちゅう手を指してけつかるねん」 予想外の手を指すと言われる、この台詞が出るときは余裕があると見て良い
  • 「けつかるて……ガラ悪いとこやでェ」 前述の台詞から派生、ガラが悪かった事を反省したように思わせて最善手を指してくる
  • 先生の番やね?」 長考が入ると焦らせるために読みを揺さぶってくる、たまに本当に確認で入る
  • 負けました!」 同レベルなら間違いなく負けに繋がる一手に対して出る言葉、負けたわけではない
  • 「~~♪」 かなり歌が上手い

その後も人は増えていく

 夕方になるにつれて道場に人も増えてくる。大会前の調整に来た女性、元警〇の偉い人、聞いてみると土日になると子供もたくさん来て満員になるそうだ。思っていた将棋道場のイメージがどんどん崩れ去っていく。そもそもフリー雀荘のようなイメージを抱いていたのが間違いだったのだ。

まとめ

 将棋を知らな過ぎて、人が居るのに対局できない自分にもどかしさを感じていた。将棋道場とは「将棋というボードゲームを楽しむために用意されたデュエルスペースみたいなもの」という捉え方が一番しっくる来るのでは無いだろうか、同じ趣味の人間が集まるボドゲバーのような対戦の雰囲気も感じることができた。

 しかし、ある程度将棋を指せないとどうしようも無いという事だけは伝えておきたいと思う。

 ocalshowさんによる真面目な記事はこちらです ↓

【大阪の将棋道場】天王寺将棋センターへ行ってきた


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小林RH

編集長オカルテック
ネットゲーム、アナログゲーム、ギャンブル、ダイエットなどの記事をメインに オカルトといえばホラーなイメージを覆すため日々執筆中 「オカルトとは誰でも楽しめるエンターテイメント」