あべのハルカスで人生初の本格わんこそばに挑戦してきた!

 生きている内に一度は食べておきたい料理の一つがわんこそばである。岩手県発祥の食っても食ってもお椀の中に蕎麦が投げ込まれる料理で、なんとも楽しそうな料理というイメージである。そんなわんこそばが大阪でも体感できるという事を知ってしまった私は心躍りネットで情報を集める事にした。

 開催場所はあべのハルカス内催事場、いわゆるデパートの物産展というヤツだ。「みちのく岩手の味と技展 第2回」という名前で2019年11月13日~19日までの間やっている中のイートインコーナーで挑戦を受ける事ができる。しかも、わんこそばでほぼ業界最大手といわんばかりのそば処 東家さんがやっているにも関わらず2,200円(税込)である。どうやら去年もわんこそば食べ放題は行っていたらしく自己記録の更新に来る人たちなどもいるそうだ。とにかくチャンスは1週間しか無い。まず私は広大なネットで「わんこそば」について学ぶことにした。ここから先は闘いの記録である。

わんこそばを何杯食べれるか

 まず最初に突き付けられた事実は「わんこそばは食事では無く、自分との闘いである」という事だ。全てにおいて何杯食べられるかが求められる世界、なんとなく感じていたがこうやって文字にされると一気に緊張感が高まる。食事もトレーニングといった言葉がアスリートの中で使われることがあるが、食事こそが闘いであるという言葉は最近プライムビデオで視聴したドラマ「食いしん坊!」(全4話)を思い出させてくれる。いや、別に食いしん坊を見てマイブームが大食いになっているわけではない。麺類は二刀流(左右の手で箸を持って食べる)で攻略したかったがわんこそばは終始利き腕の反対側にお椀を持つことになるのでできなかった。邪道食いだけはしないように心の隅にハンター錠二を住まわせた。

平均、何杯ぐらい食べられるのか

 おっと、話が逸れてしまった。イートインスペースでは挑戦者の記録が張り出されており、大体どれぐらい食べられるかの目安になる。ネットや店員さんの説明では女性で30杯程度、男性で50~60杯という話が多いのだがなかなか信用できない数字かと思える。わんこそばという料理の特性上、食べる事に自信のあるやつが集まるのは必至だからだ。どうみてもそれの倍以上の数字が平均的に張り出されているわけだ。行く前は一応の目標値として「100杯越え」を掲げていたのだが、この修羅のイートインスペースでは平均値であった。

 わんこそばは1杯の量というのは特に決まっていない。通常のそば1玉を15個のお椀にわけて配膳するというスタイルを取る。つまり1椀あたりの量は茹で前100グラム程度のそばを15で割った7g前後だと考えられる。実戦上、本当にまばらで麺が3本程度で「サービスサービス!」の時もあればビュッフェ形式の小そばぐらいの量をぶち込まれて「はーいがんばって」の時もありそこそこ運が絡む可能性も考えられる。マンツーマンでの接客ならばどれだけ1椀がバラけていても15杯の時点でそばが収束がするのだが、給仕は1人で2人3人とそばをぶち込むこともあるため運が悪いと「はーいがんばって」(麺量大)の連発で理論値以上にそばを食わされる

ネットで得た攻略法

 闘いの準備が揃った所。専用の前掛けを首から掛け、後はお椀のフタを取ればスタート。もう一度お椀のフタを閉じる事で終了の意思を示す、というスタイルだ。ここでもう一度わんこそばの攻略法を思い出しておこう。ネット上で得た知識は大きく2つである。

  • ツユは飲まずに蕎麦だけを食べて、3~4杯ごとにタイミングよく捨てる
  • 薬味や小鉢などには手を付けない

 この2点を守れば100杯はイケるという事を信じて心を落ち着かせる。

薬味が美味そう

 なめこおろし、とりそぼろ、海苔、後はお椀の上にネギともみじおろしが用意されていた。普通に美味そう。本来ならばなめこおろしウメェー、これは何杯でもご飯イケるね!みたいな方向でテンションが上がるのだが、今回は攻略法を信じて後半の味変や食欲増進のために残しておく

30分1本勝負開始!

 ほどよい緊張感の中、ついに始まったわんこそば。記念すべき1杯目、わんこそばの理想と現実が少し違う事を痛感する。わんこそばの蕎麦はキンキンに冷えているわけでもなく、茹でたばかりの蕎麦を軽く水で洗った程度のまさに人肌の温度で提供される。ぬるめのかけそばのような温度である。ほとんどツユがわからないが、お椀内を滑らせるようにすすってしまうとツユがよく絡む可能性が高いので麺をしっかりと箸で掴んでリフトアップし、少しでもツユを切る方向で食べる。とりあえず一言目は河相我聞になりきって「……美味い!」と呟いておいた(映画「食いしん坊!」より)。

~40杯

 お椀を積むスタイルの本格的なものである。15杯で通常かけそば1杯分という目安として15個ずつお椀が積まれていく。40杯あたりでそろそろ「おっ、これ100杯キツいんじゃないか?」という気持ちが過ってくる。大体15杯で100gと計算すると45杯で300g、そう二郎系ラーメンの並ぐらいの麺量という事になる。実際は蕎麦オンリーなので計算は少し違うが、数値に直すとやはり精神的にクるものがある。

80杯到達

 15杯がすごい速さで積み上がっていくのが面白い。先に食べていた隣の男性を追い抜いてスピードで80杯に到達。100杯まで後もう少し。時折見せる厨房内ではそばが大量に茹でられているのがわかる。給仕さんがお盆に載せた15杯を3人に振り分け切るとお替りを取りに行くので少し休憩ができる、しかしこの小休止がまた憎い。もうここまでにしておくかとお椀にフタを閉じるタイミングにもなるからだ。100杯、3桁という目標があるのでここで心を折るわけにはいかない。もちろん腹具合はすでに限界近いのだが「わんこそばは目の前の少しの蕎麦を食べる」というタスクだけをこなせばイイという、小さい目標をコツコツと積み上げていくダンベルトレーニングのような競技なので「あと1杯」を続けることでどんどんお椀が伸びていくわけだ。

100杯!

 積まれたお椀が7列!15×7の105杯!100杯越えおめでとう~と給仕さんにも言われる、まるで専属トレーナーのようなスパルタ蕎麦入れだったがおかげで自分を越える事ができた。成長!圧倒的感謝!とフタを閉めようとするが、問答無用で「はーい、じゃんじゃん」と蕎麦をぶち込んでくる。給仕さんは「はーいドンドン」か「はーいじゃんじゃん」、「はーいがんばって」、「お替り取ってきま~す」ぐらいしか言わないのだが、無言で「お前はまだいける」と言われていると感じた。ふと壁に貼られた記録の紙を見てみると107杯の男性が目に付いた。

 記録の紙は自分で書くスタイルなのだが、その107杯の男性の顔が浮かぶ。107杯で死んでいったJ、120杯で死んでいった富樫、130杯で死んでいった虎丸。かなり顔の濃いメンツだが、100杯というのはスタート地点に過ぎなかったのだ。記録があるならばそれに挑戦するしかない。「はーいどんどん(食ってアイツらを越えろ)」という言葉が隠されていた。

165杯、もう限界である

 写真を撮る事も忘れて食っていると気づけば150を超えて、165杯にまで到達していた。そう最初に見かけた記録紙165杯の一号生筆頭であろう「きむ兄ぃ」さんを越えたかった。もうここまでくると意地である。「越えますよ、きむ兄ぃさん……」と紙に向かって宣言してしまったので166杯は食うしかなった。もう給仕さんとそういう空気になっていた。そういう空気になっていてもサービスの3本ぐらいしか入っていない蕎麦を入れてくれることは無く、なんかちょっと量が多い系のドン!を入れてくるので敵か味方かわからなかった。

175杯で制限時間ギリギリ終了

 なんとか最後の1杯と繰り返しオールインを続けていたら30分が来てしまった。そう今回のわんこそばは30分という時間制限があるため、スピードも求められるのだ。といってももうちょっとだけ時間は残っていたのだが限界だったのでここでギブアップ。終わった後の積み上げられたお椀を写真に取りながら、食いすぎだろ!と自分で自分をツッコんでいた。

 30分わんこそば食い放題2,200円でこの可愛い証明手形も貰える。調べてみると本店では薬味や小鉢の種類が増えてデザートまで付いて3,520円とフルコースなのだが、こうやってわんこそば単体を少し安めに体感できるのは面白い。ただ伝えたいことは岩手の地元民は「わんこそば? やらねーよ、蕎麦はゆっくり食いたいじゃん」だそうで、薬味や小鉢を楽しみつつ50杯程度にしておくのが一番美味しく頂けるというのを実感した事だ。ちなみに15日に行った時点での最高記録は203杯だそうで、これは越えられる気がしなかった。

 人生で一度は食いたかったわんこそば、こんな形でチャレンジできたのは運が良かった。

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小林RH

編集長オカルテック
ネットゲーム、アナログゲーム、ギャンブル、ダイエットなどの記事をメインに オカルトといえばホラーなイメージを覆すため日々執筆中 「オカルトとは誰でも楽しめるエンターテイメント」